2006.12.6 AM2:20
この頃から、ゴン太は時々私の部屋で寝るようになっていた。
夜中、私の傍らで寝ていたゴン太のハァハァという荒い息の音で目が覚めた。
苦しそうな息だった。今まで一度もこんなことはなかった。いつも、朝までぐっすり寝ていた
ゴン太なだけに、これは絶対おかしいと嫌な予感がした。
少しの間様子をみていたところ、フラフラと立ち上がった。すると、次の瞬間、
夜ご飯に食べた物をものすごい勢いで吐いた。
嘔吐物には白い泡のようなも
のも混ざっており、量は大量であった。食あたりにしては様子がおかしい。
ゴン太はパタンと横になってしまった。とりあえず嘔吐物の始末をしたが、
AM3:00をまわった頃、ハァハァと荒い息で再びフラフラと立ち上がり、
先ほどと同じく大量に白い泡のようなものを吐いた。
ゴン太はすっかり弱った様子で‘伏せ’の体勢で座りんでしまった。
と、その時忘れられない不思議な出来事が起きた。
ゴン太が誰かに呼ばれたかのように突然ムクッと顔を上げたのだ。
そして、天井の斜め上を見た瞬間、そこに何かを見つけたのか天井の
斜め上を見つめたまま、今にも倒れそうなフラつく足でその近くに歩み寄り、
ぺたんと伏せの体勢で座った。この薄暗い部屋の中でゴン太だけが、じっと
何かに集中してシッポをふっている。すぐに、私はゴン太にはお父さんが見え
ているのかも!と感じた。
目を凝らしてゴン太がみつめている場所を見てみるが、やはり私には何も見えない。
今の日付、12月6日は前の年に亡くなった父の命日の2日前であった。
父の命日は、12月8日である。
私は、ゴン太が見ている方向と同じ方向に向かって思わず言った。
「お父さん、ゴン太を連れて行かないで。守ってね。」
それから少しして、ゴン太は、そのまま吸い込まれるように睡眠モードに入り、
スースーと寝てしまった。
−AM7:30−
寝ているゴン太を起こしてみた。反応があって、ゴン太はすぐに立とうとした。
しかし、足が立たずバタンと倒れてしまい立つことができない。ゴン太の顔を
よく観察すると、眼振が起きていた。瞳がぐるぐるまわっている。これでは世の
中がぐるぐる回っていて立てるわけがない。
肝臓の状態が急に悪くなったのだろうか?
でも、眼振が肝臓と関係あるのか??いろいろ考えれば考えるほど気が動転しそ
うな自分を抑えて、すぐにゴン太を病院へ連れて行き、朝一で担当の美人先生に
診てもらった。先生は、落ち着いた口調で「どうしたんでしょうねぇ」と言いながら、
ゴン太の顔を覗き込んだ瞬間言った。
「ああ、これは! あたったんですね!!脳梗塞ですよ。 」
先生は続けて、「 ほら、頭が左側に傾いて斜頸もありますよね。老犬に多い
症状なんですけど、脳梗塞か脳出血などの脳から来る病気ですね。」と説明し、
「泡のようなものも吐きませんでしたか?」と聞いてきた。
母と私は驚きのあまり言葉を失った。
脳梗塞・・・父と同じ病気だ。これは、運命なのだろうか。
ゴン太のことをかわいがっていた父、ゴン太も大好きだった父と同じ病気の疑いがあると
言われるなんて。しかも父の命日の2日前に。
やっぱりゴン太には父が見えていたのだろうか?
まず、治療法は、この症状の場合は、ステロイドを投与すると80%の確率で
症状は治まり、ほとんどの子は良くなるのでステロイドによる治療をしていきましょう。
ということだった。
詳しくCTなどの精密検査を行えば、ハッキリとした診断が
できるかもしれないが、精密検査を行うには、大学病院に行かなくてはならないし、
保険が適用されないので金額的にも莫大な費用がかかるそうだ。
しかし、その治療方法には、大きな心配があった。
ステロイド剤は肝臓にかなり負担がかかるからである。
肝臓に腫瘍のあるゴン太には、ステロイド剤による治療によって受ける
肝障害のリスクが高くなるのはいうまでもない。
したがって、念のため血液検査を実施し、現段階の肝機能の状態
を調べたうえでステロイド剤を投与する量を決めることにした。
<2006.12.6 血液検査結果>
検査項目 | 結 果 | 基準範囲 |
赤血球 | 609万 | 500−1000万 |
白血球 | 13200 | 600−15000 |
ヘモグロビン | 13.7 | 12−18 |
ヘマトクリット | 39.0 | 40−55 |
血小板 | 54.9万 | 10−45万 |
総ビリルビン | <0.2 | 0.3以下 |
GOT | 22 | 41以下 |
GPT | 432 | 123以下 |
アルカリフォス ファターゼ(ALP) | 713 | 132以下 |
LDH | <100 | 328以下 |
γ−GTP | 17 | |
結果、GPT値が相変わらず基準よりも高い状態であったが、「この程度ならば」と先生は決断し
通常量のステロイド剤をゴン太に注射した。
それから、ALP値が上昇傾向なのが気になっていたのだが、ちょうど先生から
そのことについて軽く説明してきた。
「具体的に何かはわからないけれど、体の中で何かが起こっているというのは
間違いないでしょう。」
かなり曖昧な説明だったが、この先生のきっぱりした言い方は頼りがいがあって
何故か小気味良かった。